「ストーカーは『人間依存症』という治療が必要なれっきとした病気である」という認識が広まり、「ストーカー医療」がもっと一般化して欲しい。なぜならそれが最も効果的なストーカー犯罪対策だから。

ストーカーとは「特定個人への依存症」である

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また、ストーカーによる痛ましい殺人事件が発生してしまいました。被害者の方のご冥福を心からお祈りします。

ブコメではストーカー加害者をキチガイとして切断処理しようとする声が大きいですが、ストーカーという「症状」は特定個人への「依存症」であり、加害者および予備軍への精神的ケアや治療が必要な立派な「心療内科案件」です。

これは決して私の独自理論というわけではなく、ストーカー加害者へのカウンセリングを20年以上に渡り続けてきたNPO法人「ヒューマニティ」理事、小早川明子先生の言葉です。

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警察だけでは防げない―ストーカーを「無害化」するための治療を | nippon.com
「最初は、ストーカーは “悪いやつ” だから、被害者の盾になってあげたいという気持ちが強かった。ところが、被害者からの依頼で実際ストーキング行為をしている人たちに面談してみると、加害者も苦しんでいることが分かりました。恋愛に苦しんだ末につきまとっているとか、立ち直れなくて自傷行為を繰り返している人たちが多い。それですぐに、これは特定の人間に対する『依存症』なのだと分かりました」

『例の彼女』への未練をこのブログ開設以来7年以上に渡って書き続けている「ストーカー予備軍」であるTa-nishiこと私も、自身の経験から完全にコレに同意します。


「離れたくても離れられない」、「考えたくないのに考えてしまう」

アルコールやパチンコへの依存症を考えてもらえば分かりやすいですが、依存症とは依存対象から「離れたくても離れられない」病気です*1。これと同じようにストーカーも、ストーキング対象個人への過剰な執着から「離れたくても離れられない」「相手のことを考えたくないのに考えてしまう」状態に陥っています*2


私が7年以上に渡って『例の彼女』に対する未練をこのブログで書き連ねているのも、完全に「『例の彼女』依存症」だからです。

私は別に、『例の彼女』について考えたくて考えているわけではない。彼女が私ともう復縁する気など更々なく、別の人生を歩んでいることも分かりきっている。

それでも私はともすれば一途の望みを託し、彼女へと未練たらたらのキモいメールを送りたくなってしまう。彼女ともう一度やり直したいと願ってしまう。それが彼女にとって迷惑以外のなにものでもなく、現在の惨めな自分の人生からの逃避行動に過ぎないことは、私自身が誰よりもよく分かっているというのに。

いま、私がキモいメールを送信することを辛うじて自制し踏みとどまれているのは「たまたま」に過ぎません。10年前、彼女を喪った直後の自分を振り返ってみると、あのとき私が彼女を殺していても、あるいは私自身が自ら命を断っていても、なんらおかしくなかった。

私がストーカー犯罪に手を染めなかったのは「たまたま」に過ぎませんし、今後絶対にストーカー犯罪を犯さないかと問われれば、「わかりません」としか答えようがありません。


未成熟過ぎる、ストーカー医療

もう6年以上前になりますが、私の『例の彼女』への異常な執着が、ストーカーのそれと同じモノなのではないかということをずいぶん前から自覚していた私は、ネットで見つけた「ストーカー専門外来」を銘打つ心療内科へ通院したことがあります。しかし正直なところ、治療は役に立ちませんでした。


依存症治療法の一つに、自助グループによる相互セラピーがあります。同じ症状で苦しむ者同士で経験を語り合い、励まし合い、自分を見つめ直しながら完治や症状の緩和を目指すというものなのですが、ストーカーに関してはそもそもまず治療を受けに来る当事者の数が圧倒的に少ない。

私が参加を勧められたグループは週1回の開催予定だったのですが、参加者が集まらず開催されない回が非常に多かった。開催されたとしても人数が少なく、共通項も少ないためまったく話が噛み合わない。

私が参加した回は、私を含めて参加者たったの2名。同席の方はリストラや病気で家族と離れ離れになってしまったという方でそれはそれで大変気の毒に思いましたが、私の経験とは異なる点が多すぎまったく参考にはなりませんでした。


その後も私は藁をも掴む思いで「ストーカー治療」「恋愛治療」を謳ういくつかの心療内科NPO法人を訪ね歩き、「治療」をお願いしてきました。しかし結局のところ私が感じたのは、「ストーカー医療」という分野はまだまだ治療法が確立されておらず未成熟で、当事者の苦しみを解消するために充分なシロモノではない、ということでした。


そもそもストーカーに繋がるような「特定個人への過剰な執着」が「依存症」であるという認識が世間に存在しない。認識が存在しないから「患者」がそもそも集まらず、知見が集約されない。知見が集約されないから、有効な治療法も確立しない。

専門外来の少なさも問題です。先ほど挙げたストーカー専門外来へ通うために、私は電車で片道3時間もの時間をかけて通わなければなりませんでした。その場所にしか外来が存在しないからです。


もしストーカーが「特定個人への依存症」であり、アルコール依存症と同じように治療が必要な「病気」なのだともっと広く世間に認知されればどうなるか?


治療の質も上がり、専門外来も増え、外来が増えれば自助グループにも人が集まりやすくなるでしょう。人が集まれば共通した体験を持つ患者同士での語り合いも活発になり、自助グループも有効に機能するようになるでしょう。

「ストーカーは依存症であり治療が必要な病気である」

この認識が常識として世間に広まり、この病気が「病気」として確立されることを、当事者のひとりとして私は切に願わずにはいられません。冒頭に挙げたような悲惨なストーカー犯罪を予防するために、私のようなこの症状に現在進行系で苦しめられている方々を救うために。それが一番効果的な対策だと確信しているからです。


*1:原因は現実逃避先や習慣など。

*2:アルコールやパチンコでは対象の過剰摂取により金銭/健康/人間関係といったものが犠牲になりますが、個人依存症患者は「思考の自家中毒」に陥ります。「対象」が意思を持った人間でありモノではない以上、自由に「摂取」することは不可能だからです。