ネットの「とおりすがり」を、人間扱いしてはいけない

コウモリ氏(id:Rlee1984)という方のブログは読んだことがないので、氏がどのような人物なのか私はまったく知らないし、炎上しているコンテキストも「はてなブックマーカーが集まったオフ会で、出し物としてコウモリ氏がフランス人の美人彼女にプロポーズしたら批判された」程度のことをブックマーク経由で聞きかじっている程度なので、氏への批判が妥当なものなのかということには一切触れるつもりはないのですが。

「ネットで目立つ行動をしてそれに批判が集まり、さらに反論して火に油を注ぐ」ことは、10年近く前に別ネームでブログを書いていたころ、私も何度か経験しているので、ネットでの振る舞い方について、思ったことを書きます。



ネットで知り合うひとりひとりと「真摯に対峙」しようとした結果

当時の私は、「ネット経由でハンドル程度しか知らない相手でも、モニタの向こうは1人の人間なのだから、可能な限り真摯に向き合おう」「批判している相手も同じ人間なんだから話せばわかるだろう」と考えて、ブログ運営を行っていました。

このポリシーに基づき私は、コメント欄の「とおりすがり」さんと何万字もの議論の応酬を行い、意図が伝わっていないと感じたはてブコメントの誤解を解くべく別エントリを上げ、2chヲチ板にハンドルを名乗りつつ逆突撃し、反論しまくりました。

この行動は、当時の私的には、前述した性善説的ポリシーの元、ひとりひとりと人間として真摯に向き合おうとした結果だったのですが、揚げ足を取られるばかりでこちらの意図が全然伝わらないというケースがほとんどで、精神的にも時間的にも大変なリソースを割きながら、それに見合った実りある結果になることはあまりなかったと記憶しています*1


ブクマをしている人間なんて、相手の事情も知らず、TVの前でワイドショーにひとことコメントする程度の軽い気持ちでコメントしていく人間がほとんどです。こうした方に、本気で「反論」などしても、相手は面食らうだけでしょう。

ひどい人間になると、相手をサンドバックにしても構わない「コンテンツ」として扱い、ダメージを与えることを目的としてコメントしていく人間すらいます。こうした人間は、何を言っても相手を叩くのに都合のいい「材料」として脳内解釈を行うので、どんなにまっとうな反論を行っても無駄です。

こうした人間が一定数存在するネットでは、性善説的考えは、通用しません。こちらがひとりひとりと真摯に向き合いたいと考えても、相手はこちらをそこまで人間扱いしてくれません。「話せばわかる」は、お互いの信頼関係が一定以上ある人間同士だけで成り立つ話であり、素性も知らない人間同士が文章だけでコミュニケーションするネットでは、通用しないと考えるべきでしょう(非常に残念ながら)。


ネット上で、はてブユーザーのような「とおりすがり」の人間を、1人の人間扱いしてはいけません。あなたの人生にとって、彼/彼女らは「モブ」です。広大なネット上で「とおりすがり」の人間など、所詮その程度のつながりの人間ですし、そうした人間が言うことを、いちいち真に受ける必要もありません。

本当に言葉を「真に受ける」べき相手は、充分なネット上でのやりとりを経て、リアルに負けないほどの信頼関係を築き、お互いの素性もある程度知り合った、「友人」だけで充分でしょう…というか、リアルではあなたもそのように振舞っているハズです。私達が街中を歩くとき、すれ違う人間ひとりひとり全員と「真摯に向き合おう」などと考えるでしょうか?


炎上に反論し、「火に油を注いで」しまう方は、基本的に「いい人」なのだと思います。相手を「人間」として見ているからこそ、「話せばわかる」と考え、真摯に接し、理解してもらおうとしてしまう。

しかし、ネット上の人間は、所詮街中ですれ違った「とおりすがり」程度の関係でしかありません。なかには、あなたを傷つけることが目的の、悪意に満ちた人間すら存在します。そんな人間を「真摯に」「まともに」相手したとしても、相手にエサとして消費されるだけ。本当に、人生の無駄です。そんなことで心身を疲弊することは、やめたほうがいいでしょう。



「炎上させる側」のマナーもネットリテラシーに組み込まれて欲しい

…と、ここまで「炎上させられる側」である書き手が自衛するための心がけを書きましたが、これだけでは片手落ちだと私は考えています。

これまで、ネットでは「炎上させられるヤツが悪い」という論調が支配的でした。しかし、そもそも「そのつもりもない人間をコンテンツとして扱う」こと自体が、あまり趣味のいい行動とはいえないわけで、「炎上させる側」にも「これ以上、いけない」的なマナーが存在するべきではないでしょうか。

「炎上させられるヤツが悪い」は、「いじめられるヤツが悪い」と50歩100歩ですし、「延焼するから反論してはいけない」は「いじめに抵抗するとますますいじめられるから抵抗するな」とたいして変わらない理屈だと私は思います。


「炎上では、叩く側は"1vs1"のつもりだが、叩かれる側は"1vs何千何万"だ」という話をよく聞きます。ひとりひとりは自分の意見を書き込んでいるだけのつもりでも、それの集中砲火を受ける側はそうではない、という話です。私もかつては炎上経験がある身ですから、この感覚は本当によくわかります。

ひとりひとりは軽い気持ちだとしても、それをまとめて引き受ける側のストレスは、想像を絶するものがあります。いくら相手が「いじりがいのある隙だらけの相手」だったとしても「だからといって叩いていいのか」「いくらなんでも叩き過ぎでないのか」は、考慮されるべきではないでしょうか。


こうした「炎上させる側のマナー」は、これまでほとんど議論されてこなかったように思います。しかし、炎上でかかる個人の負担を考えると、「炎上させる側」にも一線の節度が必要であり、その「一線」がネットリテラシーとして多くの方に共有されているマナーが必要なのではないでしょうか。

ネットで炎上を見かけた際、「あまりにも叩かれすぎている」と感じたら、炎上に加わりたいと思ってもグッと我慢し、黙って立ち去るなり、余裕があれば釘を挿したりする。そんなマナーが「ネットの常識」になるといいなと、私は思います。

*1:ごく稀に「全力で殴り合った結果、ガッチリ河原で握手」的な展開もあるにはありましたが。