『ワンピース』のクッソ遅くかったるいストーリー展開に垣間見えるリベラルな「平等主義」について

ワンピース、普通に好きっ子です

ネットで言及すると否定派賛美派入り乱れて大乱闘となり、飲み屋で話題にしてはいけないネタ3大巨頭、「政治/宗教/ワンピース」とまで言われるモンスター炎上コンテンツとして有名な尾田栄一郎先生の『ワンピース』ですが、私は普通に好きです。

家には全巻そろってるし、コンビニで新刊出てるの見れば速攻で買うし、表紙似てるから新刊だと思って買ったらもう持っててダブることもしばしばだし、数年前の劇場映画版「フィルムZ」は劇場まで観に行きました!面白かったです!

でも展開、クソ遅いよね…

そんなワンピース普通に好きっ子の私ですが*1、ここは面白くないなーと思うトコロはやっぱりある。これは本当によく批判される部分ですけど、物語の展開が間延びしすぎ!これはやっぱりね、認めざるを得ない。

1つのエピソードに2年も3年もかけて、「前に似たような展開あったよね!?」って話を延々と繰り返されるのは、普通に好きっ子である私をもってしても、やっぱり苦痛であります。

私は「世界政府/七武会/四皇の3すくみは今後どうなっちゃうの!?」とか、「Dの名を持つ者の謎ってなんなん!?」とか、ワンピース世界の政治や謎に興味があるんであって、各島での麦わらの一味の活躍とかバトルとか、べつにたいして興味ない。島と島の間で世界が動くパートは超面白いんだけど、島に辿り着いた瞬間、「あー、ここから5巻以上かったるい展開が続くのか…」と、正直うんざりした気持ちになってしまうのです。

主要キャラ全員に活躍の場を与えようとせんでも…

でね、なんでワンピースの話はこんなに展開がクッソ遅くかったるいのかっていったら、「主要キャラ全員に無理やり活躍の場を与えすぎ!」これに尽きると思うんですよ。

ゾロみたいなバトル要員はともかく、ウソップやナミみたいな後方支援要員まで、バトルで活躍させなくていいじゃん?言っとくけど、ひと昔前のバトル漫画だったらとっくに切り捨てられてるよ、お前ら?

ひと昔前のバトル漫画なら、今ごろウソップは「知っているのかロビン―!?」言うだけの富樫虎丸要員だし、チョッパーは敵幹部の背中に張り付いて「さよなら天さん…」ドカーン!いってあざとく読者の涙を誘う役回りだし、サンジですら新世界の頃にはヤムチャ的噛ませ犬扱いにされてて全然おかしくないし、ナミは普通にお色気ポジション!残酷なようだけど、弱肉強食のバトル漫画のサバンナでは、初期キャラはこうした不遇な扱いを受けるのがデフォルトの掟なのです。


ところが、ところがですよ。ワンピースはこの鉄のサバンナの掟に抗ってみせる。ウソップは相変わらず弱いけど、弱いなりに変な植物とか射撃して頑張るし、チョッパーは「自分の中のバケモノ」を制御できるようになるし、サンジは無限に脚技追加されて能力者にもまったく引けを取らない闘いっぷりを見せるし、ナミは普通にお色気ポジション!

で、思うにこれはアレですよね。尾田栄一郎先生の「優しさ」ですよね。

そもそもワンピース自体が、ドラゴンボール的な「戦闘力」の世界観ではなく、ジョジョ的な「能力バトル」の世界観じゃないですか。ドラゴンボールの世界では、地球人がどんなに努力しても圧倒的な性能差をもって産まれたサイヤ人には絶対に敵わないけど、そんなことはワンピース世界では起こらない。

人にはそれぞれ違った個性があり、すべての人間に、能力に応じたなんらかの活躍の場がある。そんな「リベラルで優しい」世界観を体現しているのが、悪魔の実の相性が勝負に大きく関わってくる「能力バトル」であり、麦わら海賊団全員に平等に活躍の場が与えられる「バトルシーン」でしょう。


でも、この博愛的な「平等主義」こそが、物語のテンポを悪くしている元凶だっていうのは、残念ながら否めない事実なんですよね。麦わら海賊団のメンバーが少なかったアラバスタ編あたりまでならともかく、いま何人いるんですか?10人は余裕で超えてますよね?しかも、初期キャラは基本同じ戦法で闘うから真新しさを加えていくにも限界あるし、やっぱり飽きる。

評価の高いエース奪還作戦が描かれた「頂上戦争編」が面白かったのは、麦わら海賊団を離散させた結果全員に活躍の場を与える必要がなくなり、物語のテンポがよくなったからですよ。たぶんこの辺、作家/編集者側も解ってて、だからこそ物語の山場であるあの場面でメンバーを離散させたんだと思うんですけどね。


でまぁ、なんていうんですかね、ワンピース。確かに物語展開は間延びし過ぎだし、ホントなんとかならんのかね?って思うんですけど、この「平等主義」を掲げて連載していく以上、どうにもならんのでしょうね。やるとしたら、「頂上戦争編」みたいになんらかの都合で海賊団メンバーがバラバラになるとか、そういう展開にするしかない。

でもね。面白さを犠牲にしてまでポリシーを貫こうとする作家の姿勢が見え隠れするワンピースみたいな漫画、好きか嫌いかで言ったら私、好きですよ。そのせいでつまらなくなってるのはなんともですが、尾田先生には可能な限り、己の信念を曲げずに走り通して欲しいものだと応援しています。がんばれ尾田先生!負けるな栄一郎!



…と、ここまで一気にボルテージマックスで熱くワンピースへの想いを語ってみましたが…

…え?「間延び問題は、そうしたほうが連載長引いて集英社的に儲かるという大人の都合だ」って?

知ってるけど、こういう作家側の意図に勝手な妄想ふくらませるのも、コンテンツの素敵な楽しみ方のひとつじゃあないですか(´・ω・`)


ONE PIECE 82 (ジャンプコミックス)

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*1:普通に好きっ子。「大好きっ子」ではない。