詐欺師の開き直りが「正義」とされるされるこんな世の中じゃ

な…なにを言っているのかわからねー、と思った


増田と僕でベースとなる価値観がおそらく540度くらい違うので、どこから突っ込めばいいのか途方に暮れてしまったのですが、増田の言い分は「すっげーイライラした」ので、僕の考えを書いてみようと思います。

短所ばかりアピールして好かれると思うなよ。何なんだよ。
終わったあと説教したら、「短所はあらかじめわかってもらわないと不誠実だと思って」。
なんで付き合うのが前提なんだよ。向こうは考え中なんだよ。
お前は考え中の相手に対して「俺はこんなにダメです!こんなにもダメなんです!」って言い続けたんだよ。
そしてダメな部分を受け入れるよう、暗に強要してたわけ。
それは甘えてるってことなんだよ。初対面の人を相手に甘えるな。彼女や嫁だけにやれ。

ここが本当に、何を言っているのかわからない。まだ付き合っていないで考え中だからこそ、長所も短所もおたがい全部さらけ出したうえで、付き合うか判断し合いましょうというのが人として当たり前の態度だと僕は思いますし、「長所だけアピールして短所を隠しておく」ことは、端的に言って「騙している」ということだと思うのですが、そうではないのですかね?

で、


"なんで付き合うのが前提なんだよ。"

"ダメな部分を受け入れるよう、暗に強要してたわけ。"


(ο´・д・)???


確かに貴女と私はまだお付き合いしていませんし、だからこそダメな部分を受け入れるのもお断りするのも貴女の自由ですが、いったい何を強要しているのでしょうか…?むしろ、欠点を事前に相手に通告することで、彼女や嫁として受け入れがたい事実に直面せず済むようする、相手に対する思いやりだと思うのですが、違いますかね?


たとえば僕が「不治の病に侵されて余命5年の命と宣告されており、バツイチ子持ちで借金1000万。ただしイケメンでコミュ力最強」というプロフィールの持ち主だったと仮定して。短所はひた隠しにしてイケメンとコミュ力を武器に2年間お付き合い。そろそろ結婚かという段になって「実は俺…」と打ち明けられたら、「騙された!」とあなたはブチ切れたくならないでしょうか?

あるいは人間相手でなくても、たとえば不動産で賃貸物件を見学した際、「こんなにキレイで駅近で、しかも新築5万円!こんなイイ物件、他にありませんよ!」とセールストークをかまされたものの、実際住んでみたら線路が近すぎて電車の騒音で夜も眠れず、水回りの欠陥が原因の悪臭に日々悩まされ、そのうえ隣の住民がニートのキチ○イ。夜な夜なイチャモン付けにあなたの家のドアをノックしにやって来るタイプの人物だったとしたら、「ぐぬぬ…」という気持ちにあなたはなりませんでしょうか?

そうした不幸な事態を未然に防げるよう、欠点も含めた判断材料を相手に与えることが、「相手に対する思いやり=『誠意』」でなくて、一体なんなのでしょうか…?


まぁ、いま挙げた例はいわゆる極論という奴で、「程度問題だろそんなの」という話であることは、充分承知しています。でも、基本はそういうことだと思うんですよ。なんだかんだ理屈つけてるけど、あんた、相手を騙してるわけじゃん。そこに対する罪悪感はないわけ?と、そういうことだと思うんですよ。


嘘も方便、を無理やり正当化されましても

というわけで、以上、論破完了。俺の完全勝利。Q.E.D.。として僕の価値観的には試合終了としたいところですが、おそらく世間的にはそういう話で終わらない。というのも、長所だけをアピールし、短所をひた隠しにして相手を騙し、モノや人を売りつけるという手段は、ビジネスで、就活の面接で、婚活で。その他あらゆる場所で、世間で普通にまかり通っているやり方だからです。

まぁ、理由はわかります。欠点を馬鹿正直に自分から申告したら、競争で勝てるものも勝てなくなりますし、嘘をついて騙したほうが、圧倒的に有利だからです。周りが「嘘」で実力を底上げしている中、自分だけが馬鹿正直に闘えば、完全なる無残な敗北がその先に待ち受けていることは、目に見えています。

そして、短所というものは、できればあまり眼にしたくない、世間の闇の部分です。そうしたものには蓋をして眼を逸らし、知らないことにしておいたほうが、自分にとっても多くの方にとっても幸せで都合がいい。不都合で不快な真実よりも、都合がよく気持ちいい嘘を信じたいということは、社会にはたくさんあります。

だからまぁ、社会を回すためには、そういう嘘も、ある程度はしょうがない。嘘も方便。わかります。でも、それはあくまで「必要悪」。そこにはやっぱり罪悪感や恥の感情をもったうえで、「仕方なく」やるべき。

…と、僕はこのように考えるのですが、増田の言い分はそうではない。むしろ、「嘘をつかないヤツが悪い」くらいのことを言っている。ここが僕的には、非常に許し難いところでして。

相手を騙すなら、騙しているという罪悪感もってやれよ、と。なに自分の「悪」に屁理屈つけて、正当化してるんだよ、と。僕は、そのように思うのですね。


だから俺は独身なんだよ

以上、僕の思うところをこれ以上ないほど愚直に述べてみたわけですが、僕のような感性は、恐らく日本では一般的ではありません。それは、増田についたレスやブコメを見れば、火を見るよりも明らかです*1

これは恐らく、自分が信じる「神」を「自分」の中に持つ西洋圏の思想と、「世間」の中に持つ日本の思想の対立という、宗教論に通じる話であり、僕は西洋側、増田は日本側に立っているのではないか。これはネットを媒介にした宗教代理戦争だゼ、となんとなく思うのですが、僕はこのへん非常に無教養かつ不勉強ですので、ボロが出ないうちに大風呂敷は引っ込めます*2

なんにしろ、自分のような感性が極めて少数派であることは、30年以上生きてきて骨身にしみて理解していますし、こういう感性を持っていると「嘘」に遭遇するたびイラついたり必要以上の罪悪感を感じて非常に生きづらいですし*3、だから俺はいい歳こいて独身ですしモテていないので、ああ、この点、確かに増田の言うとおりだな、と思いました。

つづく

*1:俺はたぶん、一般的な人に比べて「嘘」に対して異常なほど潔癖で、契約社会的な考え方をする傾向が強いです。

*2:端的に言えば、善悪の基準が「自分」にあるか「世間」にあるかの違いということです。神が「世間」にあるのであれば、世間で正しいとされていることが正義となり、自分の内面に善悪の基準は存在しない。ゆえに「世間派」の人には「罪悪感」という概念自体が存在しない、という話になります。たぶん。

*3:就活や婚活は本当に苦痛でしたし、万が一「長所アピールで人を騙す」ことが仕事である営業職などに就こうものなら、罪悪感からのストレスでひと月持たずに自殺すると思います。