メディアに踊らされ、自分に合わないコンテンツを掴んじまった哀しみに

ベイマックス…

ベイマックス、ネット巡回先各所で評価がもの凄いことになっていたので観てきたのですが、「つまらないとまでは言わないけれど、そこまで絶賛するほどの映画でも…」という感想でした。

「よくできた映像がキレイな子供向け作品」といった趣きで、実際、製作側も「映像がキレイな子供向け作品」として作っていて、それが「よくできてる」んだからそれでいいじゃないか…素晴らしいことじゃないか…とは思います。

深みがまったく感じられない、解りやすすぎるストーリー展開は死ぬほど退屈でしたが、私のようなアラフォー独身中年おじさんがぼっちで観にくることなぞハナから想定されておらず、家族連れの親御さんが子供にも安心して観せることができるファミリー映画として作られているんだから、子供にも解りやすい単純明快さというのは、むしろ賞賛されるべき美質でしょう。

ターゲット層を読まず、メディアに踊らされて全然好みでもない作品を選択してしまった、私がぜんぶ悪いのです。ぜんぶ自己責任なのです。


「売れているし、よくできていることも認めるけれど、自分の好みには合わない作品が、世の中にはある」


それなりの趣味人であれば、誰もが通過儀礼として知っていなければならないこの事実。知っているはずのこの事実。

FFドラクエマリオの新作に見向きもせず、ワンピースの新刊をスルーし、SEKAI NO OWARI?なにそれ美味しいの?と耳を塞ぐ。

そうした好みの作品に対するリテラシーと嗅覚が、作り手より、我々趣味人にこそむしろ求められているというのに、またもやらかしてしまったこの屈辱。すべては2年前、「子供向けだと思っていままでノーチェックだったけど意外とやるじゃねぇか!見なおしたぜディズニー!!」と私に言わしめた超大傑作、「シュガーラッシュ」が悪いのです。私はもう、騙されない。監督名まで、ちゃんと見る。


かわいそうに、本物の映画を観たことがないんだな…

正直なところ、ベイマックス"ごとき"映画がここまで絶賛されているという事実には、結構、もにょるものがあります。

懐石料理の基準でラーメンを批評することが愚行の極みであるように、求められる要素が違う異ジャンルの作品を「映画」という雑すぎる括りで比較することは、何の意味も持ちません。持ちませんが、それでも"面白さ"という尺で、明らかにベイマックスより"面白い"映画なんていくらでもあります。

「かわいそうに、本物の映画を観たことがないんだな…」

なにやら上から目線で愚民に"本物"を啓蒙する山岡士郎のような気持ちになってしまったので、パッと思いついた「ベイマックスより圧倒的に面白い本物の映画」を、完全なる私の主観によって並べてみようと思います。

以下の映画を観てください。本物の映画をご覧に入れますよ。



ベイマックスより、圧倒的にかわいく、痛快です。



ベイマックスより、圧倒的に泣けます*1



ベイマックスより、圧倒的にびっくりします。



ザ・フォール/落下の王国 特別版 [DVD]

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ベイマックスより、圧倒的に"美"です。



父、帰る [DVD]

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ベイマックスより、圧倒的に"アート"です。



ベイマックスより、圧倒的に"人生"です。


以上、それぞれ""ディズニー"、"泣ける"、"シナリオ"、"映像美"、"アート"、"人生"という尺度から、ベイマックスより圧倒的に面白いと私が感じる映画をセレクトしました。どれも最高の映画ですので、是非、ご鑑賞ください。


「本当に素晴らしい作品」が絶賛されるのは気持ちいいものですが、「そこまででもないだろう…」という作品が世間的にやたら高評価されているという状況はなんとももにょるので、ついつい、やってしまいました…「世間の評価なんて俺の評価とは関係ねぇ!俺が楽しめたかどうかがすべてだ!」というのが、カッコイイ趣味人のあるべき姿とは思うのですが、私はまだまだ修行が足りません。

こんな記事書いといて言うのもなんですが、みなさん、映画にかぎらずコンテンツは可能な限り「自分の好み」で「自分の嗅覚」を磨いて選択しましょう。それが外れたからといって文句を言うのではなく、自分には合わないコンテンツだったのだと、自らの選択眼のいたらなさを反省しましょう。それがカッコイイ趣味人というものです、マジで。

*1:個人的に新編は蛇足