人狼における「初心者への配慮をもたないガチ勢」問題

人狼、楽しいです

ここのところ人狼ゲームにハマり*1、月1回ほどのペースで各所人狼会に顔出しさせてもらっています。

私はお酒を飲むのも好きなので、ゲーム後の二次会などにもよく参加させていただいているのですが、どこの会に行っても必ずと言っていいほど話題になるのが「初心者への配慮をもたないガチ勢*2問題」です。


人狼はチームで協力して遊ぶチームプレイゲームなので、個人がどんなに有効な攻略パターンを練っても、必ずしもそれが最善手になるとは限らないゲームなんですよね。どんなに事前に「オレが考えた最強の攻略法」を編み出しておいたとしても、それは他のプレイヤーがある程度想定内の「有効手」「定石」を打ってくれることを前提としており、それに沿わない展開になった場合、攻略法はあっけなく崩れ去ってしまう。それが、人狼というゲームがもつ性質なのです。

中級以上のプレイヤー同士であれば、ある程度の「定石」が共通の前提としてあるので比較的短時間で同じ結論に辿り着き、「定石」どおりの展開になりやすいのですが、「定石」を知らない初心者の場合、「初心者がよかれと思ってとった行動が、逆に自陣営に対して不利に働いてしまう」という問題が発生してしまいます*3


人狼界隈では、このことは大きな問題としてすでに認知されており、多くの人狼会で主催者側が初心者向けの配慮として様々な工夫を凝らしてくれているのですが、まれに現れる「初心者への配慮をもたないガチ勢」の存在が、多くの人狼会共通の悩みのタネとなっているようです。


「初心者への配慮をもたないガチ勢問題」とは

「初心者への配慮をもたないガチ勢」の問題としてよく聞くのが、ガチ勢本人は「最善手」…多くの場合、それは『定石』を前提としており、『定石』どおりのゲーム展開が行われた場合、それは確かに論理的に正しい…を打ったにも関わらず、経験が浅い初心者の不確定行動によって『定石』が崩れ、結果的に自陣営が負けてしまった際の、ガチ勢の態度の悪さです。

問題にされるタイプのガチ勢は、こうしたゲーム後あからさまに不機嫌になり、ひどい場合には初心者を責め立てるような態度や言動をとることすらあります。こうしたガチ勢の悪態は、ただでさえ慣れないゲームに緊張している初心者をさらに萎縮させ、ゲームへの参加に恐怖を覚えさせ、のびのびとゲームを楽しむことを不可能にし、こうした仕打ちにあった初心者の多くは、もう2度と人狼に遊びにこなくなってしまいます。


不確定要素を楽しむ「チームプレイゲーム」と、ガチなやり込みを楽しむ「ソロプレイゲーム」の間の、楽しみ方の向き不向き

ガチ勢にしてみれば、「オレが考えたとおり『普通』にゲームが進行していれば勝てたのに、初心者のあいつが馬鹿なことをしたせいで負けてしまった」という話なので、気持ちは分からなくもないのですが、初心者に対して定石を把握しておけというのは無理な話でしょう。また、人狼がもつ大きな楽しみのひとつとして、「プレイヤーのアイデア次第で様々な展開が起こり得る」という不確定要素の楽しみがあるのですが、あまりにも「定石」に縛られすぎたプレイは、人狼のそうした楽しさそのものを破壊してしまいます。

「いかに『定石』に沿った完璧なプレイを編み出すかという詰将棋的な楽しみ方もある」、という意見もあるとは思いますが、この世で最も制御が難しい不確定要素である、「経験値も考え方も異なる他人」と共にチームプレイを行う人狼というゲームにそうした楽しみを期待するのは、「蕎麦屋にラーメン屋の濃厚さを求める」ようなもので、筋が違うといわざるを得ないでしょう。


個人技を磨き抜くことこそが面白さの核となるゲームも、世の中にはたくさんあります。囲碁、将棋、そして私が大好きな対戦格闘ゲームなどのガチ勢による極められた個人技の応酬は、観る者を感動させる力に溢れています。そうしたゲームの面白さと素晴らしさも、私はよく知っているつもりです(参照)。

しかし、人狼のようなチームプレイゲームでは、チームメイトが必ずしも自分ほどのスキルを持っているとは限らず、自分が想定したように動いてくれるとも限りません。チームプレイゲームは、むしろその「不確定要素」こそが楽しみの核であり、「ガチプレイ」には向かないゲームだと考えたほうがよいのではないか。完全さを求めることは、むしろゲームの楽しさを損なうことになるのではないか。私は、そう考えています*4

ta-nishi.hatenablog.com

人狼 ~嘘つきは誰だ?~カードバトル

人狼 ~嘘つきは誰だ?~カードバトル

*1:ネット人狼ではなくリアルの対面人狼

*2:勝敗に本気でこだわるプレイヤー。

*3:麻雀でいうところの「他人がリーチしてるのに無闇にカンしてドラを増やす初心者」みたいなものです。

*4:逆に、個人技を競うゲームを楽しむためには、ある程度のプレイヤースキルと「ガチさ」が必須であり、「ゆとりプレイ」にはまったく向いていない、とも思っています。