愛のないセックスは、誰も幸せにしない
以前すこし書きましたが、私、15年ほど前にナンパ師をやっていた時期がありまして、最近の恋愛工学周りの話を読んでいていろいろと思うことがあったので、そのときの話でも。
「ぼくは愛を証明しようと思う」は、商業本としては文章が稚拙すぎて流し読みしかできていないんですが、似たような内容のナンパ本は、昔から出版されていました。私の時代は「モテる技術」というナンパテクニック本が売れまくっていて、私もそれをバイブルにして、日々ナンパに精を出していたものです。
女性の方には大変もうしわけないんですが、こうした恋愛工学的なモテ技術は、「数をこなす」ことだけを考えた場合、正直、非常に有効です。ただ、数をこなすだけで男性は幸せになれるのかっていったら、そんなことは全然なくて。
私の場合、ナンパで初めて落とした女性…というか、そのときは完全に逆ナンで「棚からボタ餅」状態だったんですけど、本当にもうしわけなかったんだけど、正直、その女性は私としてはまったく魅力を感じることができないタイプの女性だった。でもまぁ、初心者ナンパ師としては折角のチャンスだし、経験のひとつとしてセックスさせていただこう。そう思ったわけです(クソですねー)。
そんな感じでセックスさせていただいたんですが、やはり好きでもない女性とのセックスは、まったくやる気が起こらない。そしてそうした負の感情は、やっぱり相手にも伝わってしまうんですね。「全然、気持ち入ってないね…」とその場で泣かれ、彼女を傷つけてしまいました。
この苦い経験以来私は、「魅力を感じない女性をナンパするのは止めよう。恋愛対象として好きになれそうもない女性に声をかけるのは止めよう」と心に誓い、これはナンパ以外の出会いでもこれまでずっと守り続けている、私の恋愛観の中で最も重要なポリシーのひとつになっています*1。
結局、愛してもいない女性とセックスしても、こちらも虚しいだけだし、相手にもその気持が伝わって傷つけるだけ。愛のないセックスは、誰も幸せにしないんです。
↑の記事の恋愛工学徒の方は、テクニックで女性を落としても虚しいだけなので、本気になれる女性との純愛を目指すようになったと書いていますが、この気持ちは非常によくわかります。
以前の記事で取り上げた現役ナンパ師氏も、「ナンパに成功しても、相手の質に満足できなくて虚しい」という悩みを抱えていましたが、結局のところ、セックスや恋愛の満足度は「数」ではなくて「質」なんです。「愛のないセックスは、誰も幸せにしない」。このことに早い段階で気付けた私は、ラッキーだったと思っています。
「恋愛工学」の対極にいる「童貞騎士」
「愛のないセックスは、誰も幸せにしない」と書きましたが、恋愛工学的な技術をすべて否定するつもりも、私はないんですよ。
シロクマ先生が「最短距離で性器に辿り着く方法と、コミュニケーションを育む方法は違う」と仰っていて。確かに異なるけど片方しか取れない概念ではなく、むしろ片方だけ取った場合に前者は恋愛工学に、後者は童貞騎士に陥る話でないかと思った。大概の物事は矛盾を孕んでもなお共存する。
— しの(79.7) (@raf00) 2015年7月14日
↑に出てくる「童貞騎士」というのは、女性慣れしていないがゆえに女性との適切な距離感がつかめず、キモいほど過剰に紳士的に振る舞うことで「いいひと」として恋愛対象外になってしまうという童貞にありがちな現象で、恋愛工学でいうところの『非モテコミット』に近い概念です(参照)。
前回の記事で書いたように、童貞騎士の問題は、相手のニーズを無視し、自分の想いを相手に押し付ける「愛情の押し付け」に陥りやすいことです*2。
id:raf00氏が指摘するように、テクニックに溺れ、愛を無視しているのが「恋愛工学徒」、その対極にあるのがテクニックをまったく使わず、相手のニーズを無視して純愛のみで暴走する「童貞騎士」だということは、確かに言えると思います。
弱者男性論で有名な赤木智弘氏は、「女性の人権を尊重する誠実な男性はモテない」という主旨の主張を展開していますが、童貞騎士的視点から見れば、こうした図式は確かにあるんですよ。ちょっと極論入ってますけど。
モテない人というのは、相手の自主性を十分に重んじるがために、女性に対して軽薄なアタックができない人である。だからこそ、女性が自ら興味を惹かれるようなイケメンや金持ちでない限り、女性の人権を自然に蔑ろにできるような人でないと、モテることができない。
— 赤木智弘@終始世に憂慮 (@T_akagi) 2015年7月11日
純愛一辺倒でもなく、テクニック一辺倒でもなく
結局のところ、恋愛というものは純愛一辺倒でもなく、テクニック一辺倒でもなく、両方の要素を含んだものであり、そのどちらもが大切なのだということを知り、認めることが大切なのだと思います。
童貞騎士から見れば恋愛工学徒は「不誠実なヤリチン」に。恋愛工学徒から見れば童貞騎士は「女に騙されている馬鹿なオナニー野郎」に見えるかも知れませんが、実際の恋愛は「愛」と「テクニック」、どちらを蔑ろにしても上手くはいかない。テクニックだけでも虚しいし、純愛だけでも相手の本音のニーズに応えることはできない。
前回の記事でも書きましたが、恋愛における理想の男性とは、童貞騎士の「相手への想い」と、恋愛工学の「テクニック」を、共に兼ね備えた男性だと思います。「心は童貞!技術はヤリチン!」恋愛において目指すべき理想の男性の姿とは、やはりコレだと思うんですよね、私は。
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