ぼろぼろフライパンの、あの日

iPadが毎日ランダムにセレクトしてくる写真フォルダおすすめの1枚を見て、十数年前に私がいまの人生を選択するターニングポイントとなったとあるイベントのことを思い出した。

当時ときどき遊びに行っていたDJバー店長が主宰した、界隈のお客さん中心に70-80人程度が集まる中規模クラブイベント。DJがかける音楽はオーディエンスの年齢層に合わせ90-00年代を中心に、ダンスミュージックからJ-POP/アニソンまで幅広くオールジャンル。

当時の私は人生に迷走しまくっていた時期で。少し前の大失恋のダメージがいまだ生々しく残るなか*1登録した婚活サービスはまったく上手くいかず、残りの人生に意味も希望も見い出せず鬱々とした毎日を過ごしており、実際医師からうつ状態と診断され薬を処方されていた。


そんなある日に開催されたこのイベント。特にそれほど楽しみにしていたわけでもなく知人が主宰だからという程度の理由で顔を出したのだけれど。

なぜか無性に楽しかった。なぜか無性に盛り上がった。

理由はわからない。ひとつのDJイベントとしては別段盛り上がったわけでもなく、極々平凡なイベントだったと思う。

でも、私にとってはちがった。周囲など関係なくただひたすら盛り上がり、歌い、踊り、叫びまくった。理由はわからない。気づけばDJが選曲したユニコーンの名曲『大迷惑』に合わせ、手にした100均のアルミフライパンを全力でぶっ叩きながら*2大声で怒鳴り散らかしていた。

「この悲しみをどうすりゃいいの!!!誰が僕を救ってくれるの!!!!」*3


あの日、私の中でなにかが吹っ切れた。未来のことなどどうでもいいと思った。その時々いまその瞬間を全力で楽しもうと。享楽主義に準じて生きようと。そう思った。


翌朝、私は婚活サービスに解約のメールを入れた。

100均のフライパンはぶっ叩きすぎて自分でも引くほどぼろぼろになっていて。気づかぬうちにそれで切っていたらしい手のひらは血まみれだったが心は晴れやかだった。

主宰だった店長とは、いまでも仲がよい。



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*1:このブログではお馴染み『例の彼女』の件である。

*2:『武器』がコンセプトのイベントで「武器」を持ち込むとディスカウントされるシステムだった。途中のダイソーで買った。

*3:「うるせー!」と野次が飛んできたのを覚えている。こいつはまさに大迷惑である。